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執筆者の写真meat epoch 跡部美樹雄

エイジングシートの誕生 その2

発送の転換


 

従来の熟成肉は、自然浮遊している微生物を利用し肉を熟成化していましたが、そこには不要な微生物も付着する可能性がありました。


“安心・安全“且つ”美味しい熟成肉”を作るには、どうしたらいいのか・・

試行錯誤の研究でしたが、明治大学と旬熟成(運営会社:株式会社フードイズム)との共同開発(特願2016-031727)により、「エイジングシート」を開発いたしました。


このエイジングシートを使用することにより、確実にスピーディーに且つ安全に熟成肉を作ることが可能となりました。そして、「エイジングシート」による酵素と微生物を利用し発酵した肉を、私たちは、『発酵熟成肉』と命名いたしました。

 


こうしてできたエイジングシートでしたが、きっかけは何かといいますと、


菌を扱うというリスクと、巧みの技であるために安定的に作り続けることの難しさ。

菌には良い菌もあれば悪い菌もあります。よく発酵食品は腐ってるのと同じと理解されている方が多くいますが、まったく別物なんです。


〜腐敗〜

肉や魚を放置しておくと、タンパク質や炭水化物などの成分が微生物の作用で分解され、次第に外観やにおい、味などが変化し、最後には食べられなくなってしまいます。このような現象を腐敗と呼んでいます。魚や肉で、タンパク質やアミノ酸などが分解され、硫化水素やアンモニアのような腐敗臭を生成する場合が代表的な腐敗の例である。


〜発酵〜

肉や魚に限らず食品は微生物の働きによって次第に分解されていきます。ヨーグルトや酒のように、糖類が分解されて乳酸やアルコールなどが生成されたり、米や麦が麹菌によって味噌ができたりと、微生物によって作られた食べられる食品を発酵食品と呼びます。


この考え方と同じなのが熟成肉です。

肉に微生物(胞子)が付着して毛カビと成長し、熟成肉になっていたのです。


自然浮遊している菌を使用していたので、腐敗菌より先に発酵菌が付着する必要がありました。ですので、熟成肉は非常にデリケートでメンテナンスを欠かせない食品でした。


当初は、美味しい熟成肉を作るのには、環境整備と管理及び熟成菌を増やすため、非常に時間を要しました。(詳細は以前の記事のごらんください。)


その頃に明治大学の村上先生と出会い、菌からのリスクを学んだことで、「スピーディーに安全に誰でも何処でもというコンセプト」でエイジングシートの元の考え方になっていきました。


エイジングシートの素材選び


菌の種類は突き止めることができました。その名前は、ヘリコスチラムの接合菌。

この菌を簡単に使えるようにするためにはどうすればいいのか?ここが一番の悩みどころでした。肉に付着させるには『貼る、塗る、かける』のいづれかです。胞子は懸濁化させることは可能だということだったので、粉末状にしてスプレーで噴霧したり、その懸濁液を直接塗るなど考えたのですが、誰でも同じように作れて、再現性ある商品化を目指していたので、最終、湿布のように貼り付けることができれば問題は解決すると考えました。


次にその胞子をつける物は?

重要なのは使い勝手と機能性。それと菌が付着しやすい素材です。布、紙、化学製品などいろいろと考えましたが布が製品化しやすいのと食品に使っても問題が少ないのではないかと当たりを付けました。肉業界では身近なレーヨン素材のミートラップというものが既に存在しています。まずはこれで試作してみました。このような研究から開発までは数年単位で時間がかかると聞いておりましたが、試作品開発までに要した期間約1年で仕上がってしまいました(笑)。村上先生の予測がかなり現実的で精度が高かったのでしょう。あっという間の開発でした。ただ実際にこれが機能するのかの検証が必要です。


次回その検証をご紹介いたします。






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